武蔵野アール・ブリュット2026の2日目。7月11日(土)吉祥寺美術館にブラインドコミュニケーターの石井健介さんを迎え、「雑談型アート鑑賞ワークショップ『おしゃべりでソーシャルアートビュー®』」を開催しました。
<要旨>
石井さんのワークショップでは、「正確に説明すること」よりも「感じたことを言葉にすること」の重要性が共有された。視覚障害者への作品説明では、色や形を細かく説明するより、「情熱的な赤」「少し怖い印象」など感情や印象を添えることで、より豊かなイメージが生まれることが示された。
また、参加者同士の雑談を通して作品の見え方が変化し、一つの作品を多様な視点から楽しめることを全員が体験した。触図アートの鑑賞コーナーでは、作品を忠実に再現することではなく、「触って何を感じてもらいたいか」を考えることが重要であるとの気付きが多く語られた。
触図は、制作者・鑑賞者・対話者が共に作品を完成させる新しいコミュニケーション手法として高い可能性を持つことが確認された。
<概要>
テーマ:言葉・触覚・対話による新しいアートコミュニケーション
学び:正確な説明より、感情や印象を共有することが作品理解を深める。
成果:触図アートは、視覚障害の有無を超えて共に作品を創り、対話を生み出す新しい鑑賞方法であることを参加者全員が体感した。
① 石井健介さんから「言葉で伝えること」について
参加者から、「色をそのまま『赤』『青』と伝えるだけでは、半分くらいしか伝わらない気がしました。」という感想がありました。
石井さんは次のように答えました。
細かな情報を全部説明されると途中でついていけなくなる。
それより、「私はこの作品が好き」「なんとなく怖い」という感情から入った方がイメージしやすい。
色も、「情熱的な赤」「静かな青」のように感情を添えてもらえると想像しやすい。
見えない人も「赤」という概念は持っているので、感情や印象を重ねてもらうことで作品を豊かに想像できる。
② 雑談型鑑賞の楽しさ
石井さんは、作品を正確に説明することよりも、作家はなぜ描いたのかこの人物はどんな人生だったのか昔こんな経験をしたのではないか、というような雑談こそが、作品への理解を深めてくれると話しました。
また、参加者が「矢沢永吉のタオルが描かれている」と気付いたことで、作品全体の印象が一気に変わったことを例に、雑談によって作品は何度でも見え方が変化すると話しました。
③ 参加者の感想
参加者からは次のような感想がありました。
●感情を伝える大切さ
正確さよりも感情を伝える方が伝わる。トロピカル、明るい、不気味などの表現が大切。
●他者の見方で作品が変わる
一人で見た時は素通りした作品だった。他の人の話を聞くことで全く違う作品になった。
対話によって作品が豊かになることを実感した。
●目が怖かった
人物作品について、多くの参加者が「目が怖かった」という共通した印象を話しました。
一方で、怒っているわけでも笑っているわけでもない、読み取れない表情が逆に魅力にな
っている、という意見もありました。
●対話より雑談が面白い
これまで学んできたVTSでは、事実と感情を分けて話すことを学んできたが、今回は「雑
談」によって作品との距離が縮まり、石井さんがどう感じるのかを聞くこと自体が楽しか
った、という感想がありました。
④ 触図アートワークショップの振り返り時間について
参加者から、
●触感には思った以上に多様性がある。
●触って初めて分かる世界がある。
●触図は新しいコミュニケーションツールになる。
●見る人・作る人・鑑賞者の共同作品だと感じた。
●作品を再現するのでなく、「触って何を感じるか」を表現することが大切だと気付いた。
という意見がありました。
⑤ アートファシリテーター兼MC(林賢)のまとめ
●本物の作品を見ると新しい発見がある。
●コピーでは得られない気付きがある。
●触図にはまだ標準的な方法はない。
●今後、美術館ごとに様々な方法や取組が生まれていくだろう。
●社会共生・アクセシビリティの取組として全国に広がっていくと良い。
●興味のある人は美術館のボランティアなどにも参加してほしい。
と話しました。また「今日だけでは答えは出ません。これから皆さんと一緒に新しい表現
方法を育てていきたい。」と締めくくりました。
⑥ 坂口寛先生(東京藝術大学名誉教授)からのコメント
坂口先生は(同音楽室での私たちのワークショップを見守りながら最後にアール・ブリュ
ットのワークショップとして)ご自身の「みんなで点描画を作ろう」3枚の六角形のキャ
ンバスに油性マーカーで点を打って、自由に合作画をつくろうに参加を促していただきま
した。
・一人一人が小さな作品を作る・それらが集まって大きな世界を作る・地球全体が一つの
キャンバスになる。という作品コンセプトも紹介されました。
⑦ 閉会後の交流
閉会後は、アンケート回収、名刺交換、NPOクリエイティブライフデザインの活動紹介、「身近なアートコミュニケーター」養成講座の説明、武蔵野FMの取材アナウンサーにご挨拶、関係者とアクセシビリティや触図の今後について意見交換などが行われ、数名が坂口先生のワークショップへも参加していきました。
そして参加者同士で昼食やカフェに向かいながら交流を続けました。

アートは、一人で見るものから、みんなで語り合い、育てるものへ。
NPOクリエイティブライフデザインは、見える・見えないという違いを超え、対話や触れる体験を通して、一つの作品を共に味わい、新しい発見を分かち合うアートコミュニケーションを実践しています。これからも、アール・ブリュットの多様な表現に学びながら、人と人がつながり、多様性を認め合える共生社会を目指して活動を続けてまいります。

