7月10日。
武蔵野アール・ブリュット2026の会場。
テーブルいっぱいに並べられたのは、
フェルト、布、綿、糸、緩衝材、モール、スポンジ……。
どれも普段なら工作の材料として見過ごしてしまうものばかりです。
「好きな素材を選んでください。」
参加者の皆さんは、最初は少し戸惑いながらも、一つひとつの素材を手に取り、指先で確かめ始めました。
今日の目的は、作品を上手につくることではありません。

目の前にあるアール・ブリュット作品から感じた
「動き」
「勢い」
「優しさ」
「不思議さ」
「命のようなもの」
そんな目には見えない感覚を、
触れることのできる作品=触図アートとして表現することでした。
制作が始まると、
会場の空気が少しずつ変わっていきます。
「この布は風みたい。」
「この素材はゴツゴツしていて力強い。」
「ここはふわっとしている。」
作品を見ながらではなく、
自分の感じたことを素材に置き換えていく。
すると、不思議なことが起こります。
同じ作品を見ていたはずなのに、
出来上がった触図アートは、どのチームもまったく違う。
それぞれが違っていて、
どれも間違いではありません。
完成したあと、
今度は他のグループの作品を触ります。
私は皆さんに、こんな問いを投げかけました。
「この触図アートは、どこから旅を始めたのでしょう?」
作品を見ずに、
手だけで旅を始めます。
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ある人は、
「ここから風が吹いている気がする。」
またある人は、
「このザラザラは怒っているようにも感じる。」
「いや、私は元気に飛び跳ねているように思う。」
誰かの一言で、
作品は少しずつ姿を変えていきます。
触れて、
想像して、
語り合う。
そのたびに、
一つの作品が何通りもの物語を語り始めるのです。
参加された皆さんの感想には、
この時間の豊かさが、そのまま表れていました。
「触ることで見えてくる世界があることに驚きました。」
「再現することではなく、自分が感じたことを表現することが大切だと気づきました。」
「視覚のある人もない人も、一緒に作品を楽しめることは、とても大切だと思いました。」
「どう感じるか――正解のない旅は続きます。」
![]() 触図アート完成後に他のチームの触図アートを触りながら対話しているシーン |
![]() 各チーム毎に他のチームが制作した触図アートで対話している様子 |
![]() 制作意図と解釈を共有し、残ったもの・変わったものを話し合った |
参加された13名中、有効回答12件すべてが「満足」以上という評価となり、多くの方が「触覚の新しい発見」「対話の面白さ」「視覚の有無を超えて一緒に鑑賞できることの価値」を挙げてくださいました。
私は10年前、
全盲のアートナビゲーターと出会ったことをきっかけに、
この活動を始めました。
その方と一緒に作品を鑑賞していると、
「見える私」の方が、
見えていなかったことに気づかされる場面が何度もありました。
だから私は今も信じています。
がこの触図アートはどこから旅を始めたのでしょう?ふりかえりの-問いかけ-をしているところです-300x173.webp)
アートは、
「見るもの」だけではありません。
触れること。
語り合うこと。
相手の感じ方に耳を澄ますこと。
その時間そのものが、
新しいアート体験なのだと。
今回生まれた6点の触図アートには、
正解はありません。
あるのは、
13人それぞれが感じた心の軌跡です。

もし皆さんがこの作品に触れたなら、
どこから旅を始めるでしょうか。
そして、
どんな物語が心の中に生まれるでしょうか。
それを誰かと語り合う時間こそが、
触感のソーシャルアートビュー®が大切にしている世界です。
私たちはこれからも、
見える人も見えない人も、
子どもも大人も、
誰もが一緒に「感じる喜び」を分かち合える場を育てていきます。
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